さらば!「豊かな国日本」
もはや日本は豊かな国とは言えない。昨年末に内閣府が発表した「国民経済計算確報(2006年度)」によると、日本の1人当たりGDPはOECD加盟30カ国中18位となった。2000年度時点では世界3位にあった日本の1人当たりGDPは、以降毎年順位を下げ、今では下から数えたほうが早い位置にまで低下した。
「国民経済計算確報」のデータをもとに、世界における日本の豊かさの位置づけを整理してみよう。1人当たりGDPが5万ドルを超える最上位グループには、ルクセンブルクや、ノルウェイなどの北欧諸国が並ぶ。そして4万ドル前後の第2グループには、アメリカ・イギリス・カナダなど欧米の主要国が位置する。日本の位置づけはその下の第3グループである。
1人当たりGDPが3万ドル前後のこのグループには、日本のほかにイタリア・スペイン・ギリシアなどが含まれる。ちなみにOECD加盟国で最下層の第4グループを構成するのは、韓国・ポルトガル・ポーランドなどの中進国だ。つまり日本の位置づけは、先進国の中では最下層に沈んだことになる。
産業構造の高度化に失敗
振り返れば、1980年代の日本には最先端の産業が集積していた。それが日本の豊かさの源泉であったと考えることができる。日本が豊かさを維持するためには、産業構造をさらに高度化し、最先端のポジションを維持する必要があった。1980年代における最先端産業はエレクトロニクスビジネスであった。そして1990年代以降は、金融やITビジネスが最先端産業となった。ところが日本はこの流れについていけなかった。日本の金融・IT産業は、欧米の先進企業に太刀打ちできなかったのである。
購買力の衰えと内需産業の試練
現在の日本は、グローバル経済のトレンドから取り残されつつある。そして購買力の衰えは深刻である。これから日本の内需産業が、厳しい試練を迎えることは容易に想像できる。
内需系企業は、自社のビジネスモデルの抜本的見直しを図る必要がある。今まで多くの内需系企業は、海外の低コスト国から製品や原料を仕入れ、日本の豊かな消費者に販売するビジネスモデルを確立してきた。だがこのようなビジネスモデルは、もはや収益を生みにくい。また商品やサービスを高付加価値化することにより収益を確保する戦略も限界に近づいている。「ワンランク上」の生活を目指せる消費者は、年々少なくなっているのだ。
個人(あるいは財界)の所得は個人の(あるいは財界)の責任であることは当然である。これは正しい。しかし、個人(あるいは財界)は自分の所得を管理・運営できるが、個人(あるいは財界)の権限でできることはそこまでであって、個人(あるいは財界)の権限を越えた、国全体のGDPの管理・運営は政府および国会議員の責任である。
なぜなら、国のGDPは個人あるいは企業の所得の積み上げであること以外に、国全体のGDPはそれとしての管理・運営、具体的には経済構造改革と景気浮揚政策(公共投資と課税・減税)にも影響を受けるもので、それは一手に政府および国会議員が掌握しているからである。
産業構造の高度化は個人(あるいは財界)の責任が大きいとは言え政府および国会議員の責任でもある。それは小泉・竹中による経済構造改革でほぼ達成されたと言える。なぜなら、2008年に下落し始めるまでは国のGDPは少ないながらも成長していたからである。
しかし、ここに来て国のGDPは下落し始めた。その原因は国の責任の前半部分である経済構造改革が不十分であることと、後半部分である景気浮揚政策(公共投資と課税・減税)が全くなされていないことによる。
「経済構造改革が誤りであった」などと言うのは全く出鱈目である。むしろ逆に経済構造改革が不十分であっことを責めなければならない。経済構造改革を更に推し進めながら、景気浮揚政策(公共投資と課税・減税)を新たに起動させなければならない。経済構造改革と景気浮揚政策は相反するものではなくて車の両輪である。
経済構造改革が経済格差を作ったというのは「小泉憎し」の感情論である。なぜなら経済構造改革の期間中には経済格差は縮小しているからからである。それは下記引用から証明できる。経済格差が拡大しているのは経済構造改革の前後である。
経済格差が大問題であるという野党の主張も対策も正しい。しかし経済構造改革もまた正しい政策が正しく実行されたことも事実である。
上げ潮派ーーー正しい(ただし景気浮揚も必要である)
景気浮揚派ーー正しい(ただし経済構造改革の成果を認めて更に推進しなければならない)
図録▽家計調査による所得格差の推移
3.予想外の所得格差推移
高度成長期に大きく縮小した所得格差は、その後、1972年の4倍から1999年の5倍近くへと徐々に拡大していった。自営業者や役員、非就業者を含む全世帯ばかりでなく、勤労者世帯についても同様の動きである。
1980年代後半のバブル経済の時期は、特に、格差が拡大した時期であった。もっとも、この時期は勤労者世帯のみをみると格差は拡大していない点には留意が必要である。
こうした長期的な格差拡大傾向に反して、巷間の見方や国民の格差意識(図録4670)とは裏腹に、聖域なき構造改革、規制緩和の推進を掲げた2001年4月以降の小泉政権下では、むしろ、所得格差は縮小に転じている。これはどうしたことであろうか。
(2006〜07年実績値が発表され格差は再度拡大している。低所得世帯の所得が低迷する中、高所得世帯の所得が回復したからである。ここでは、なお、格差が縮小した2003年〜05年の状況を前提にコメントをしている。)
小泉改革以後、経済格差が拡大していること、これとGDPランキングの後退は、ほぼ確実に関連していることが充分予想される。
次回以降、それを証明する。








